往年の幹線を観光列車で往く

八代からは肥薩線に乗り換えて山越えに挑みます。肥薩線は元々鹿児島本線として建設され、のちに海沿いルートが出来て本線の座を譲りましたが、九州新幹線が部分開業して並行区間が三セク化された結果、普通列車だけで西九州から鹿児島に抜ける唯一のルート*1に返り咲いたという、皮肉な路線です。とは言え、人吉〜吉松間の本数が少ないので、乗り継ぎの計画を立てるのには苦労しますが…。
で、11時09分発の人吉行きは、「駅長さん」が乗って来た次の列車からも接続を取って、座席が8割方埋まって発車します。発車すると少しの間おれんじ鉄道線と並走し、やがて本線が右に大きく弧を描いて球磨川を渡っていきます。対する肥薩線は分かれてすぐに新幹線をくぐり、球磨川に沿って進みます。基本的に乗り降りが無いまま人吉まで行くのかと思いましたが、坂本駅で買い物(または病院?)帰りのお年寄りが乗ってきたりしてそれなりに賑わっています。やがて球磨川が車窓の右から左に移りますが、急流下りで有名な球磨川の割にダムに阻まれて意外なほど穏やかでした。渡駅を出ると球磨川を離れ、人吉の市街地に入ります。

 
ホロ:「この沿線には結構古めな駅が多いのぉ?」
駅長さん:「そうだね。海沿いの鹿児島本線ができる前はこっちが本線ルートだったから、立派な駅舎のある駅が多いんだろうね」
ホロ:「のぅ、『駅長さん』。この駅は山に囲まれているのに『海路駅』という駅名じゃな?」

ホロ:[列車は、球磨川を横目にゆっくりと進んで行くぞ」

人吉では、次に乗る「いさぶろう3号」まで50分ほどの乗り換え時間があります。駅近くの国宝・青井阿蘇神社へ参拝し、駅前のお土産物屋で昨日熊本市電の車中で見つけたネタを探します。入ってすぐの焼酎コーナーに、そのブツがありました。その名も「メイドのみやげ」と言う名の焼酎、もちろんパッケージにはメイドさんが描かれています。ちょっと「漫画○○」系な感じですが、もちろんお買い上げしたのでした。せっかくの球磨焼酎ですから、おいしく頂きましょう。

 
ホロ:「さすがに沿線最大の街だけに、立派な駅じゃ!」「駅の近くには神社があるようじゃ」
駅長さん:「この青井阿蘇神社は、日本最南端の国宝だそうだ」

さて、お待ちかねの「いさぶろう3号」です。キハ47形を改造した2両編成で、1号車は中間のオープンスペースがワイドな窓になっているタイプ、2号車は通常の窓配置になっているタイプでした。あわせて5割程度の乗客を乗せ、吉松へ向かいます。発車して球磨川を渡ると上り坂に差し掛かります。「駅長さん」がこの区間に乗ったのは10年近く前、「いさぶろう」がキハ31の簡易お座敷車両だった頃でした。当時は特徴のある各駅で降りることも出来ませんでしたが、今は観光列車として運行されているので各駅で5〜8分ほど停まって駅構内を見学することが出来ます。1号車には団体が乗っていましたが、そんなに多くない数だったので気にすることなく満喫できたのでした。

 
駅長さん:「この人吉〜吉松の間は列車の本数が無いから、乗るときは注意しないとな」
ホロ:「確かにそうじゃ、この『いさぶろう3号』の次は4時間も列車が来ないぞ」「ホームには『いさぶろう』の乗客に向けて、歓迎の看板立っておる」
 
ホロ:「まずは大畑駅じゃな。このえきは珍しい構造だそうじゃが?」
駅長さん:「この駅は急な坂道の途中に駅を造るために、スイッチバックといって駅に止まるのにいったん脇道に入らなければならない作りになっているんだ。発車すると、あっという間に大畑駅を見下ろせるくらいまで坂を上ってしまうんだ」

駅長さん:「これが今回乗った『いさぶろう』だ。運転開始当初は1両編成だったが、今は人気が高いので常に2両で走っているようだ」
  
ホロ:「矢岳駅にはSL展示館があって、この区間で活躍したD51が保存されておるぞ」
駅長さん:「あと、展示館の中では地元の方が農産物を売っているので、旬の食べ物が手に入りそうだ」

駅長さん:「このあたりは日本一の車窓ということで、えびの高原を見渡すことができるんだ」
 
ホロ:「この区間最後の駅が真幸駅じゃ。この駅は地面がきれいにに整備されておるな。おっ、そこに幸せの金があるのぉ、せっかくだから鳴らしてみようぞ」

吉松に到着すると、続いて「はやとの風3号」に乗り換えです。「いさぶろう」と同じキハ47を改造した車両ですが、こちらは特急列車として運行されます。こっちは「いさぶろう」から乗り換えた人も少なく、その数少ない乗客も指定席に座り、自由席に座ったのは「駅長さん」ともう一人だけでした。各停車駅で撮影タイムが設けられ、九州最古の木造駅舎である嘉例川駅も5分ほど停まって明治の雰囲気を味わうことが出来ました。

 
ホロ:「吉松に着いたら『はやとの風』に乗り換えるんじゃが、この列車はさっきの『いさぶろう』とそっくりじゃな」
駅長さん:「うん、こっちは特急列車だから、シートはちょっと豪華な造りになっているんだ」

ホロ:「次の栗の駅のそばには、日本名水百選にも選ばれた丸池湧水があるのじゃ。このあたりの水はきれいなんじゃな」
 
ホロ:「この嘉例川駅は九州で最も古い駅舎とのことじゃが…?」
駅長さん:「そう、明治36年だから1903年に開業した時のままの駅舎なんだ。だから、今年で107年経っていることになるな」

はやとの風」は鹿児島中央までそのまま直通しますが、「駅長さん」は隼人駅でいったん降ります。ここで485系「きりしま」に乗り換えようという魂胆です。一応、九州新幹線全線開通すると787系の去就が注目されると同時に、485系も安穏とはしていられないでしょうからね。予定では霧島神宮始発の「きりしま89号」に乗ろうかと思い、日豊本線普通列車で迎えに行ったのでしたが、途中の信号場で交換してしまい乗ることが出来ませんでした。それでも、霧島神宮で25分の待ち合わせで「きりしま11号」が来たので何とか乗ることが出来ました。そろそろ暗くなってくる頃合ですが、桜島を横目に見つつ鹿児島に到着したのでした。


駅長さん:「霧島神宮からは、今日のラストランナー「きりしま11号」に乗って鹿児島中央に向かうよ」

ホロ:「おっ、海の向こうに山が見えてきたぞ」
駅長さん:「あれは今もなお活動している火山、桜島だね。今日は噴煙も上がっていないようだ」
ホロ:「こうやって古い電車に乗れる機会も徐々に減っおるのぉ」

*1:最短の、という意味で